第6回日本中東学会奨励賞
(2019.7.4 更新)
第6回日本中東学会奨励賞の選考結果について
日本中東学会会長 黒木 英充
第6回日本中東学会奨励賞奨励賞の審査が同賞選考委員会において行われた結果、以下の論文を第6回日本中東学会奨励賞の受賞作とすることを決定いたしました。
TAKEMURA Kazuaki(竹村和朗 ), “A Sales Contract: The Mechanism for the Private Ownership of Reclaimed Desert Land in Contemporary Egypt” AJAMES 31(2): 207-236, 2015
[受賞理由]
本論考は、サーダート期以降のエジプトにおける「国有地の私有化」という現象に沙漠開拓地の事例から迫り、その実態と具体的メカニズムを明らかにした研究である。沙漠開拓地の社会に沈潜した人類学的なフィールド調査と法律分析とを組み合わせるというユニークな手法により、「私有化」に至る過程でのさまざまなアクターの役割、国家と社会との複雑な関係性を明らかにし、地域研究の新たな可能性を提示することに成功している。法社会学・法制度史、開発人類学等の分野から見ても興味深い論考だと言える。また歴史学的にも、1970 年代後半以降のいわゆる「インフィターフ(開放政策)」期のエジプトの経済・社会・政治にどのような変容がもたらされたのかを、地域社会の視点から描き出した貴重な現代史叙述と位置づけることができ、これまで日本で蓄積されてきたエジプト史研究・エジプト農村研究等の成果を継承・発展させる仕事と評価することができる。